まとめ連合

専任の講師の指導法。本当にあれはピアノに関係あるのだろうか?触れられた感触を思い出しながら浴槽で一人…


「…..あ…あの..」

「それは….」


千紗は自分自身の頭の中が訳が分からないままで、混乱し、狼狽えた。

だが、塚崎から与えられた課題に対してあくまでも答えようと努める。

(やだ…)

(一体….)


その時点でも、彼の突然の行為がピアノの指導に何らかの意味を持っているものでは無いかの、なんても考えていた。


ーーそうでなければーー

この唐突な行為に理由づけが出来ない。

最近は学内、学校側の職員と学生の間、学生同士でさえ厳しく指示されているセクシャルハラスメント。

その行為自身と、今自らに降りかかっているこの状況との結びつけが困難、いや千紗には出来なかった。


「そうですね…」


千紗はこほんっと咳をし、出来るだけ平静さを装って質問に答えた。

緊張で息が粗くなるのを抑えてゆっくり、ゆっくりと鼻で呼吸し、奥歯に力を入れる。


だが落ち着け、落ち着け、と思ってはいても心臓はこれ以上無いくらいに鼓動し、自らの胸を揉みしだいしている塚崎の手のひらに伝わるのでは無いかと思った。

「….」

「そうだな…」


塚崎は、やや緊張した面持ちで、千紗の後ろ姿を眺めていた。

そして右手で円を描くようにそれを動かし、中指を少し折り曲げた。

「ん..」


千紗の胸の突起がそこにあたり軽い反発がある。

塚崎はそこをむにむにと、指先の腹で小さく弾いた。

「ん…….っ..」


塚崎の視線の向こう、千紗がびくびくと反応し、小さく呻いていた。


「よし、じゃあ、その感じで…続けて..?」


彼はそのように指示を出し、左手を千紗の肩に置いた。

そして右手をやや引っ込め、千紗の下着やシャツをきちんと、丁寧に直しながら元に戻す。

「そう…そのままね..?」


やがてその左手さえも自らのポケットに収めた塚崎は、これまでの行為など何も無かったかのように振る舞い、指導を続けた。


(先生…..)


千紗は鍵盤を眺めながら、動揺を抑えられないでいた。

そして自らの後ろにいる存在が急に恐ろしいものに思えて、奥歯をガタガタと震わせていた。


その日は課題曲だけを弾いた。

千紗は、深々と頭を下げて塚崎に礼を言い、指導を受けたB棟12号室の重いドアを開け、部屋の外に出る。

「ふぅっ..」


改めて1人になると、さっきの塚崎のあの行為が一体どう言う理由によるものだったのかと容易には消化できそうも無い疑問が頭の中を駆け巡った。

好意…?


塚崎の顔が脳裏に浮かび、その輪郭を思う。

何の銘柄かは分からないがツンっと鼻をつく香料の匂い。

ある意味端正な彼の姿を想像したが、指導の際に目に入る彼の左手薬指の指輪、結婚していると言う証を想いそれを打ち消した。


結婚しているーー

その事を考えると、改めてあの時のあの行為の意味が何なのかよく分からなかった。

少しだけ、学生課の方に相談しようなんて事も考えたが、そこまで大事にはしたく無かったし、第一演奏中に胸を揉まれた、なんて事を誰にも相談したくは無かった。


「………」


千紗は何度かさっきまで塚崎と居た部屋の方を振り返り、確かめた。

「……」


それでも何の反応も、彼がドアを勢いよく開けて、「さっきのはごめん」なんて謝罪を口にする事も無く、ドアは閉まったまま。

「ふう…」


千紗は鞄を抱え、足早にその場を去った。

学校の帰りに渋谷によってウインドウショッピングでもしよう、なんて考えていた気持ちは消え去り、兎に角ただ家に帰ろう、そう思った。


ーーー夜

地方都市から出てきて学生マンションで一人暮らししている千紗は、ユニットバスに身を沈め、指先を眺めていた。

長く、細いその指先はここ2、3年で急に骨ばった感じがする。

傍目から見ればピアニストのしなやかな指、と羨ましがられる事もあるその指を千紗は好きでは無かった。

(もっと女の子っぽく…)


バイト先には、ふくよかで肉好きの良い、朗らかな後輩が男子には人気だった。

千紗は自分自身の指先、そしてスレンダーなその身体を眺める。

「ふう…」


決して十人並みの容易では無い千紗の美貌ではあったが、これまで男運には恵まれた方では無い。

交際しても気になる点があり、長続きはせず、最後に付き合ったのは1年前。

コンクールで出会った彼とは4ヶ月付き合って別れた。自然消滅だった。


「シンジ君…」


未だに前彼のことを心の中でそう呼び、思い出す。

「……」


彼はこの部屋に良く泊まった。
共に、このユニットバスにも入ったことがある。。

「んー…」


それを思い出し、喉の下、鎖骨の間に指先を這わす。


「ふ…ぅ…」


指先は千紗の乳房の上をなぞり、そして先端の敏感な部分へ。


「なんでかな…」

「なんで…」


塚崎が自分の胸に触れたこと、そのことを改めて思い出す。

そして彼がこの乳房を揉みしだいたこと。

「ふん…」


彼はこの胸に触れて、予想通りに小さな胸だと思っただろうか、それとも外見よりも意外とボリュームがあると思っただろうか…

そして、乳首に触れた感じは…


千紗はモヤモヤとそんな事を頭の中で考えて、何度か乳首の先端部に触れた。


「こんな…風に…」


塚崎がしたのと同じように、突端部をツンっと捻る。

「っ…ん…」


びくっと身体が反応し、なんだか切ない感覚が伝わってきた。

「……ん…」


再びそこに触れる。


「ぁぁ…」


ただ触れるだけで変に反応する身体をおかしく感じた。
そして、興味深く何度も触れているうちに、頭の中のモヤモヤが一層増してきたような気がした。

「私…」

千紗は下半身に手を伸ばした。

そこには薄い毛が、水面を通してゆらゆらと揺れて見えた。

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