
後輩「ですから、『オトコ』ってなんなのかって聞いてるんです」
男「……。えっと、オレは男。キミは女。オッケー?」
後輩「……すみません。ますますわからなくなりました」
男「なにがわからないんだよ?」
後輩「その……『オンナ』ってなんですか?」
男「……」
男(朝起きてから、ずっとイヤな予感はしてたんだ)
2:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 22:40:23 ID:z4d5X1yI
男(オレは今朝起きてから、今に至るまで一度も野郎を見ていない)
男(女としか遭遇しない)
男「……性別ってあるよな?」
後輩「『セイベツ』? なんですかそれは?」
男「……あのさ。馬鹿にしてる?」
後輩「ど、どうしてそう思うんですか?
私は先輩の言っていることが本当にわからなくて……」
男(たしかにそうだ)
男(オレは知っている。この子がとても真面目な子だってことを)
3:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 22:42:56 ID:z4d5X1yI
後輩「ごめんさい。私、あんまり勉強できないから、なにも知らなくて……」
男「ごめん。しつこいかもしれないけど、もう一度だけ聞く」
後輩「はい」
男「本当にキミは、男も女もわからないんだよね?」
後輩「……ごめんなさい」
男「じゃあ、キミはなんなの?」
後輩「なんなのって……人間ですか?」
男「人間はわかるんだ」
後輩「さすがにそれはわかりますよ。赤ちゃんでも知ってますよ」
男(なのに、男と女という言葉は知らない)
男(ていうか目覚めてから、変なことしか起きてないぞ)
5:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 22:46:11 ID:z4d5X1yI
♪今朝
男「んっ……あれ?」
男(おかしいな。いつの間に寝たんだろ……?)
男(課題やってるうちに寝ちゃったのかな……)
男「……いや、ちょっと待て」
男(ここはどこだ? オレの部屋じゃない)
「んっ……」
男「へ?」
「んー……」
男「ええええぇっ!?」
男(オレはベッドで寝ていた。そしてオレの隣には裸の女が寝ていた)
6:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 22:48:01 ID:z4d5X1yI
?「……うるさいなぁ。昨日遅かったんだから……もう少し寝かせてよ」
男「あ、あの……申し訳ないんですけど、起きてもらってもいいですか?」
?「なんでよー。休みなんだから、早起きする必要ないじゃん……」
男「そこをなんとか……」
男(ていうか、この女は誰だよ?)
?「あー……なに? もしかして朝からまたしたいとか?」
男「あっ、いや! 布団から出ないで!」
?「なんで?」
男「だ、だってその……全部丸見えになりますよ?」
?「今さらなに言ってんの? だいたい丸見えなのは自分もでしょ?」
男「え……のわぁっ!?」
男(オレも生まれたままの姿だったああああっ!)
7:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 22:50:22 ID:z4d5X1yI
男「な、な、な、な……」
?「朝からテンション高いね。なんかいいことあった?
ていうか、髪どうしちゃったの?」
男(女子の裸を見れたからね、とか余裕があったら返したいけど)
男「……ひとつ聞いてもいいですか?」
?「さっきからよそよそしいね。それで?」
男「あなたは誰ですか?」
?「寝ぼけてんの?」
男「いや、これ以上ないってぐらい覚醒してる」
?「ホントに?」
男「むしろそっちのほうこそ、寝ぼけてたりしません?」
?「なんでそう思うわけ?」
8:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 22:51:27 ID:z4d5X1yI
男「その……あなたはボクが誰かわかってますか?」
?「は? 昨日、あんなことしておいてよく言うわ」
男「あんなこと?」
?「エッチ」
男「…………えっち?」
?「もしかして本気で言ってる?」
男「いちおう」
男(まるで、病人でも見るような目で睨まれた)
?「あっそ。じゃあ外の空気でも吸ってきたら?」
男「……そうします」
男(なんなんだ、この状況)
9:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:03:22 ID:z4d5X1yI
♪
男(というわけで、服を着てオレは知らない家を出た)
男(状況がつかめない。しかも……エッチ?)
男(……待て待て待て! オレはセックスしたのか!? 知らない女と!?)
男(バッドコミュニケーションにもほどがあるだろ!!)
男(いや、ちがう。今の問題はエッチをしたかどうかじゃない!)
男(……今一番重要な問題はなんだ?)
男(とりあえずここはどこだろ?)
男(メチャクチャ見覚えはあるけど……あっ)
男(ここってヤマダの家の前じゃん)
男(なんでオレってば、アイツの家で寝てたんだ?)
10:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:06:31 ID:z4d5X1yI
男(じゃああの女の子は、ヤマダの姉か妹?)
男(いや、でもアイツって一人っ子のはずなんだけど)
男(それにヤマダの姉妹だったとして、なんでオレは知らない女と……)
男(そもそもどうしてオレには、その記憶がない?)
男(そんな素敵な記憶をなくすなんて、ありえないだろ!)
男「……ていうか、今日って学校じゃん!」
男「今は七時か……って、やばい! 急がないと!」
男(とりあえず家に戻って準備しよう)
11:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:09:19 ID:z4d5X1yI
女「おーい」
男「ん?」
女「おはよう! 朝からこんなところで合うなんて珍しいね!」
男「おっす。たしかに珍しいな」
男(振り返るとクラスメイトの女子がいた)
女「……って、どうしたのその髪?」
男「昨日からなにも変わってないと思うけど」
女「昨日は会ってないから知らないけど。すごく短くなったね」
男「……昨日会っただろ?」
女「会うわけないよ。あたし、昨日もバイトだったし」
12:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:11:49 ID:z4d5X1yI
女「これからもまたバイトだしね」
男「今日学校あるだろ?」
女「なに言ってんの? 今は夏休みでしょ、勘弁してよ」
男「…………」
女「そうだ、今週空いてる日ない?」
男「土日なら、空いてると思うけど」
女「ホント? じゃあ二人でどっか行こうよ?」
男「いや、その前に……」
女「……私とふたりは、やっぱりイヤ?」
男(うっ……なんだこの上目遣いは!?)
13:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:17:21 ID:z4d5X1yI
男(今までこんなことされたことないぞ!)
男「うん、たぶん空いていると思うよ」
女「ホント!? 今度は約束きちんと守ってくれる!?」
男「え? う、うん……」
男(そもそも、コイツと約束した記憶なんてないぞ)
女「へへっ。あたし、アリスカフェ行きたいんだ」
男「そう……」
女「予定はあたしが決めるから任せておいてねっ」
男「お、おう。ところでさ……」
女「あっ! いけない! このままだと遅刻しちゃうから行くね!」
男「……わかった。また今度な」
女「うん! バイト終わったらラインするー」
14:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:20:15 ID:z4d5X1yI
♪
男「おかしい」
男(オレの記憶では、今日は月曜日のはずだぞ)
男(それ以前に夏休みは、二週間も前に終わってるはずだ)
男(もしかしてオレの脳みそが狂ってるのか?)
男「ただいまー」
「お・か・え・り」
男「…………」
男(家のドアを開けたら、エプロンを着用した知らない女性がいた)
15:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:22:30 ID:z4d5X1yI
「ポカンと口あけちゃってどうしたの?」
男「誰!? まさか、泥棒!?」
「お姉ちゃんになんてことを言うのよ!?」
男「姉なんてオレにはいないよっ!」
「ひ、ひどい! 最近反抗期真っ盛りだからって……そんなのあんまりよ」
男「…………」
姉「だいたい今日も朝帰りだし。昨日も一昨日も……うぅ」
男(なにをこの女は言ってるんだ?)
男(オレには兄ちゃんはいるけど、姉ちゃんはいない)
男(しかも朝帰りとか、反抗期とか無縁そのものだ)
16:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:24:36 ID:z4d5X1yI
男「ボク、ひょっとして、家を間違えたのかもしれません」
姉「この馬鹿チン! どこの子どもが自分の家を間違えるの!?」
男「……ボクがそうかもしれないんですけど」
姉「お姉ちゃんを馬鹿にしてるの?」
男「してませんっ。ただ……」
姉「ふんっ。じゃあいいです。勝手にしなさい」
男(そう言うと、オレの姉を名乗る女性はリビングに引っこんでしまった)
男「とりあえず、ここからどうしよ……?」
17:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:28:46 ID:z4d5X1yI
♪
男「あっちぃ……」
男(家にいる気にはなれなかったので、オレはすぐに家を出た)
男(現在徘徊中である)
男「よくよく考えたら、あの女の人は親戚だったのかな」
男(親が離婚してるから、オヤジの方の親戚は把握できてないしな)
男(実は昔に会ったことがある人だったのかもしれない)
男「……そうだとしても、おかしいけど」
男(ていうか、アテもなく歩いてるけど、オレはなにがしたいんだ)
男(……そうだ! スマホあるじゃん)
男(とりあえず、これで色々確認しよう)
18:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/03/04(火) 23:30:18 ID:z4d5X1yI
男「えーっと…………え?」
男「なんだよ、これ……?」
男(オレの記憶が正しければ、今は九月のはずなんだ)
男(それなのに、スマホの液晶に映った日付は『八月』)
男「……ウソでしょ?」
男(なんだ? このスマホが壊れてるのか?)
男(いや、落ち着け。だったら誰かに電話して確かめりゃいいだけだ)
男(……)
男「アドレス帳も、アプリも全部消えてる……!」